日本人はもともと文字を持たない民族でしたが、漢字発祥の地である中国との外交的な関係構築のために文字文化の進展が促されました。日本人は漢字の音を借りて、一字一音の表記で「かな」を生み出しました。当初は、漢字の楷書の姿で書かれた「かな」ですが、平安時代に入り草書を参考に書き崩されます。やがて日常生活の手紙をはじめ、日本人がうたい口ずさんだ詩歌、物語や随筆、その他の文字を書き記すための文字としてかな書の盛行が進みました。平安中期以降、一字一字切り離して書いていた単体の「かな」は、実用の度を増すごとに、連結させて用いることにより、流麗な連綿と呼ばれるつづけ書きの筆線を生み出します。また、行頭、行末、行間をあえてそろえず、時に行を傾けて書く散らし書きなども生み、かな芸術は完成していきました。 その後「かな」は、江戸期まで実用色の濃い御家流を中心とした書風が続きました。そして明治時代になると、欧米文化を尊重するあまり顧みることがなかった日本古来の文化が見直され、「かな」も平安時代に完成した和様の書風の上代様を範とする動きが始まり、新たな時代のかな書を生み出していくのでした。 戦後は建築や生活様式が西洋化する中、日展に書の部門が設けられ、「かな」も細字中心の机上芸術から壁面芸術へと、大字かなを生み出し大きく飛躍していきました。今回の展示では、新たな時代に相応しい芸術を目指して模索していった現代かな書とともに、方寸の世界と呼ばれる篆刻をご紹介します。