日本映画の歴史において、監督・製作・脚本・美術・衣裳デザイン・編集・結髪・スクリプターなど多様な領域で女性映画人たちが手腕を発揮してきました。2022年度に開催した「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」に続き、1970-80年代に生じた映画界の構造変化の中で躍進した女性映画人たちを重点的に取り上げます。 1950-60年代の撮影所体制のもと田中絹代が監督として異例の活躍を見せた状況から一変して、1970年代以降は独立プロを基盤として、女性監督たちが活路を切り拓いていきます。女優出身の左幸子『遠い一本の道』(1977)や宮城まり子『ねむの木の詩(うた)がきこえる』(1977)は社会運動に根差した題材で大きな反響を呼び、自主製作の動向から頭角を現した鵞樹丸は『わらじ片っぽ』(1976)で前衛的表現を開拓しました。1980年代にかけて続々と女性が監督を手がけるようになり、作品の多様化が顕著になっていきます。 一方、撮影所体制がゆらぐ中で、ジャンル映画において女性脚本家たちが台頭してきたこともこの時期の特徴です。『メカゴジラの逆襲』(1975)の高山由紀子や『ビー・バップ・ハイスクール』(1985)の那須真知子などが娯楽映画に新風を吹き込みました。 そして、今回は小特集として、記録映画作家の時枝俊江と藤原智子の業績を再評価します。岩波映画製作所で羽田澄子と並んで活躍した時枝は、音声を画と対等に捉えて革新的なドキュメンタリーを打ち出しました。他方、藤原は女性史を語り継ぐ作品群を手がけています。 特集上映「 日本の女性映画人(2)――1970-1980年代」では、監督・脚本・製作などの分野を中心に、劇映画からドキュメンタリーまで計74作品(47プログラム)を上映します。日本映画の転換期に新機軸をもたらした女性映画人たちの足跡を振り返ることにより、日本映画史の再考につながる新たな視座が切り拓かれることを願っております。