フランス文学者、文芸評論家、そして当館名誉館長である菅野昭正の最後の著作『小説と映画の世紀』(2021年)をご紹介します。同書で小説と映画というふたつの芸術ジャンルを比較するにあたり、菅野は12編の原作小説と映画作品を選びました。それらはどれも20世紀に創作され、また菅野自身の生きた激動の20世紀を映しだす作品でもあります。トーマス・マン『ヴェネツィアに死す』、フランツ・カフカ『審判』にはじまり、ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』で幕を閉じる同書は、時代に翻弄される人物や状況が、作品とともにゆるやかな時系列に並べられ、菅野の目を通した20世紀の思想史を私たちに提示しています。 本展では、これら12の作品を映画ポスター等の資料とともに紹介しながら、小説と映画の織りなす世紀に思いを馳せ、過去だけでなく未来にも向けられた菅野の眼差しを追います。展示と上映会、トークイベントなどを通して、小説と映画の関係について考える展覧会です。
