「MAMプロジェクト032」は、シリア系フランス人アーティスト、バディ・ダルル(1986年パリ生まれ)の移動する展覧会シリーズ「ランド・オブ・ドリームス(夢の国)」の第一章として位置付けられます。このシリーズは今後数年、国外のいくつかの会場に場所を移して展開される予定です。ダルルは、歴史的な出来事や、世界各地への移住というテーマ、そして自身のアラブのルーツを、フィクションと織り交ぜた作品で知られるようになりました。幼少期に弟とともに架空の国を想像し物語を作ったダルルは、当初、本を主要なメディアとした作品を制作していましたが、近年の実践ではアッサンブラージュ、コラージュ、映像などに発展させています。 本展は2014年に初めて来日したダルルのアパートの広さを再現し、その空間に過去10年間に制作された作品を集めて展示し、出会いと移住という彼の制作における中心的な主題を浮き彫りにします。ダルルはこれまで、自身の人生の物語と考えに、広島で原爆の犠牲となった日本人少女の佐々木禎子や、日本に今日暮らし働くシリア人移民など、他者の個人史を幾度となく融合させてきました。国境やアイデンティティ、地理的な制約を超えた普遍的な人間の問題を鋭く、時にユーモラスに、様々な視点を交えて描くことで、作品は政治的な意味合いを帯びています。 「ランド・オブ・ドリームス」は、東アジアから中東を経て、西ヨーロッパへと旅することで、16世紀にヨーロッパの植民地主義が拡大した軌跡を逆に辿ります。1543年にポルトガル人が初のヨーロッパ人として日本に上陸したことを起点にこれら3地域の様々な歴史を繋ぎ、中東を横断する経路を、フランスに移住したシリア移民の息子であるダルルの個人的な物語と呼応させながら探索します。 ※「ランド・オブ・ドリームス」は、森美術館、ジャミール・アーツ・センター(ドバイ)、グルベンキアン・モダン・アート・センター(リスボン)により共同構想された企画です。 バディ・ダルル 《扉や窓のない国》(部分) 2016-2024年 ボールペン、マーカー、ブリストル紙、マッチ箱 サイズ可変 Courtesy:The Third Line(ドバイ) 展示風景:「私たちの世界が燃えている」パレ・ド・トーキョー(パリ)2020年 撮影:オレリアン・モル 画像提供: パレ・ド・トーキョー バディ・ダルル 《日本人、アハマッド》 2021年 ビデオ 45分 Courtesy:The Third Line(ドバイ) 制作協力:ヴィラ九条山、トーキョーアーツアンドスペース、アラブ芸術文化基金 バディ・ダルル 《スクラップブック》 2015年 インク、コラージュ、スクラップブック バディ・ダルル 《システムの王様》(部分) 2020年 インク、骨、コラージュ、古いゲームボード サイズ可変 バナー画像: バディ・ダルル《扉や窓のない国》2016-2024年 ボールペン、マーカー、ブリストル紙、マッチ箱 サイズ可変 Courtesy:The Third Line(ドバイ) 展示風景:「私たちの世界が燃えている」パレ・ド・トーキョー(パリ)2020年 撮影:オレリアン・モル 画像提供: パレ・ド・トーキョー バディ・ダルル 撮影:ノーム・レビンガー バディ・ダルル 1986年、パリ生まれ。パリ国立高等美術学校で学んだシリア系フランス人のマルチメディア・アーティスト。パリ政治学院現代芸術賞(2016年)、アラブ現代創作のためのアラブ世界研究所友の会賞(2017年)を受賞。アンティルゼン・ギャラリー(パリ、2016年)、ダラット・アル・フヌン(アンマン、2019年)、マトハフ・アラブ近代美術館(ドーハ、2023年)で個展を開催。グルベンキアン財団(パリ、2018年)、ウェアハウス421(アブダビ、2019年)、バレンシア現代芸術院(スペイン、2020年)、パレ・ド・トーキョー(パリ、2020年)、東京都現代美術館(2022年)、ジャミール・アーツ・センター(ドバイ、2024年)などでグループ展に参加。2021年には、アンスティチュ・フランセが運営するヴィラ九条山(京都)でのレジデンスプログラムに参加。