2022年に逝去した大分市出身の世界的建築家・磯崎新(享年91)は、思想、美術、デザイン、音楽、映画、演劇など、多岐にわたる領域での旺盛な評論活動によって、後進に計り知れない影響を与えた「知の巨人」でした。その磯崎は晩年、折にふれて郷土の南画家、田能村竹田(1777-1835)について取り上げ、その芸術について言及しています。例えば、竹田の著作『山中人饒舌』を、西洋美術史の古典であるジョルジュ・ヴァザーリの『美術家列伝』に比しうる美術評論として高く評価したほか、竹田市の竹田荘を訪れ、茶室「花竹幽窓」と竹田の山水図の相関を考察、極小の文人的居住空間に対する深い共感を表明しています。更に、磯崎の大叔父が、竹田の画脈に連なる日本画家・幸松春浦(1897-1962)であったことから、春浦との交流の思い出とともに豊後の南画への親しみにも触れています。 本展では、大分県立先哲史料館、竹田市歴史文化館のご協力のもと、最後の著作『デミウルゴス』の中で磯崎が取り上げた、田能村竹田や幸松春浦をはじめとする豊後南画の作品を中心に紹介、あわせて、その宇宙観が磯崎建築に影響を与えた三浦梅園の作品や、「磯崎新の謎」展(2019)に出品された帆足杏雨の画巻、そして磯崎自身の版画作品等も展示します。知られざる磯崎新と豊後南画の関係の一端をご紹介いたします。