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デッさん

サザビーズで買うのは、絵だけではない

絵画が数億円の値段で落札された、定期的にそういうニュースが流れてきます。

Firefly_Gemini Flash_絵画オークション、落札 140265.png
Adobe Firefly にて作成

だから、絵は高い、私たちには手が届かない。そういうイメージがあるかもしれません。

たしかに、作品は安い買い物ではありません。

けれど、普段ギャラリーで目にする絵は、必ずしもニュースで見るような値段ではありません。数万円のものもあります。数十万円のものもあります。作家の活動歴やサイズによっては、100万円前後になることもあります。

もちろん、それでも気軽に買える金額ではありません。

ただ、車、時計、オーディオ、家具、旅行、楽器、カメラなど、ほかの嗜好品と比べたとき、美術作品だけが特別に現実離れして高い、というわけではありません。

では、ニュースで見る、億の単位になる美術作品とは何なのでしょうか。

なぜ、同じ「絵」なのに、そこまで値段が違うのでしょうか。

ここでは、その話をします。

生活の中で買う絵と、ニュースになる絵は同じ市場ではありません

まず分けた方がよいことがあります。

生活の中で買う絵と、サザビーズやクリスティーズのような大きなオークションで扱われる絵は、同じ「美術作品」ではありますが、同じ市場ではありません。

ギャラリーで買う絵は、多くの場合、これから長く見ていくためのものです。

部屋に飾る。

毎日見る。

自分の生活の中に置く。

作家の活動を応援する。

そういう買い方です。

もちろん、将来の価値が上がることもあります。けれど、最初から資産として売買するよりも、まずは自分がその作品と暮らせるかどうかが大きい。

一方で、ニュースになる高額作品は、少し別の顔を持っています。

壁に飾る絵であると同時に、歴史の中に置かれた資産でもあります。

サザビーズで買うのは、絵だけではありません

サザビーズのような高額が付く絵画オークションで買うのは、絵だけではありません。

もちろん、絵を買っています。

キャンバスがある。

絵の具がある。

色がある。

構図がある。

そこは変わりません。

でも、高額市場では、それだけでは値段が決まりません。

誰が描いたのか。

いつ描いたのか。

その作家のどの時期の作品なのか。

どのコレクションを通ってきたのか。

どの展覧会に出たのか。

どの文献に載っているのか。

過去にどのくらいの価格で取引されたのか。

世界のどの買い手が欲しがるのか。

そうしたものが、作品のまわりに積み重なっています。

高額美術市場で買われるのは、絵だけではありません。

その絵が通ってきた時間と、歴史上の位置も買われています。

来歴は、作品の履歴書のようなものです

高額作品では、来歴がとても大事になります。

来歴とは、その作品がどこから来たのか、誰の手を通ってきたのか、という履歴のことです。

誰が持っていたのか。

どのギャラリーを通ったのか。

どの展覧会に出たのか。

どの本やカタログに載っているのか。

そういう情報が、作品の信頼を支えます。

たとえば、同じように見える絵が二枚あったとします。

一枚は、制作年、所有者、展覧会歴、文献掲載がきちんと追える。

もう一枚は、どこから来たのか分からない。

この二枚は、見た目が似ていても、市場では同じ扱いになりにくい。

来歴があると、次の人が安心して買いやすくなります。

そして、次の人が安心して買えるということは、売るときにも扱いやすいということです。

高額市場では、この「次に渡せるかどうか」が大きな意味を持ちます。