中村宏は、日本の戦後美術を代表する画家。1950年代末のレポルタージュ絵画に参加し、社会の現実を観察と記号的構成で描いた。1960年代以降は、精緻な遠近法と機械・都市モチーフを駆使し、汽車や階段、回転扉などを題材にした迷宮的空間と錯視的構成で独自の写実表現を展開。読売アンデパンダン展などに出品し、批評的実践にも関わった。1969年の「美学校」創設に参画し教育活動を継続。代表作に「空中分解」「地下鉄」などがあり、作品は東京国立近代美術館ほかに収蔵。個展・グループ展多数。作品は社会観察と知覚批評を結ぶ点で評価が高い。